ここがヘンだよ日本のアニメ業界

アニメ会社で働きながら考えたことを書いていきます

業界の中の人から見てもアニメミライはなかなか良いプロジェクトだなぁと思う話

アニメミライってあるじゃないですか。若手アニメーター育成プロジェクトの。

若手アニメーター育成プロジェクト - Wikipedia

 簡単に言うと、育成方針とそのルールに従えば、国がお金出してくれて制作会社が作品が作れるというプロジェクトです。

 

これってなかなか良いプロジェクトだと思う訳です。

 

このプロジェクトで作品を制作する各社は、売上とか気にせずに「練習」として作品作りができる訳です。

なかなかそんな機会はないですよ。

 

今回はいかにアニメミライが良いプロジェクトかということと、僕が考える改善点を書いていこうと思います。

 

■アニメミライの良い点

 

一応若手アニメーター育成プロジェクトと銘打ってはいますが、ここで育成されるのは実は若手アニメーターだけではないです。

 

まずプロデューサー。

結構どこの会社も新人プロデューサーを起用しています。メインのプロデューサーは自分の担当作品で忙しいという事情があるのでしょうが。

ほとんど表には出ませんが、プロデューサーがその作品作りにおいて一番重要なポジションを担っています。監督のオリジナルの企画というのもありますが、そうではない場合、監督も含めスタッフを采配する権限を持ってるのはプロデューサーです。

どんなに大手の会社でもプロデューサーがしっかりしていないと良い作品は作れません。

スタジオぴえろの布川さんもプロデューサーの重要性を語っていますね。

 

アニメ業界は将来を見据えて作品作りと人材育成を進めなければならない、動画協会の布川理事長が語る - GIGAZINE

 

そのプロデューサー業務をアニメミライプロジェクトを通して経験できるのは、実はアニメーター育成よりも非常に価値のあることではないかと思います。

いっそのこと、アニメミライはプロデューサーも新人しか担当してはいけないという縛りをつければいいんじゃないでしょうか?

 

つぎに監督。

アニメミライでは一線級の監督ということになっていますが、そういった監督であっても売上、売れ筋に関係なく作品を作ることができるというのは、得難い経験でしょう。

 

あとはもちろんアニメーター。

ここで言うアニメーターは新人ではなく、監督・作画監督も含めたベテラン側のアニメーターです。

アニメーターというのはフリーだったり職人気質の人が多く、人に教えるという経験がある人は少ないです。

もちろん現場で質問されたことに対して答えるということはありますが、作品を通して体系的に指導するという経験を持っている人はあまりいないです。

それを一線級の監督やアニメーターに経験してもらうというのは、アニメミライ以降での作品作りにおいて活きてくるのではないかと思います。

 

■アニメミライの改善した方がいいと思う点

 

ここまではアニメミライのメリットを書いてきましたが、プロジェクトを見ていて改善した方がいいんじゃないかという点もいくつかあります。

  

作品制作時期

 

同時に選抜された4社が制作にあたるのですが、同時にする必要があるのかということですね。

原画までは完全に固定スタッフですが、後半のスケジュールが逼迫してきたタイミングで動画・仕上げという行程があります。

アニメミライには国内の動画マンという縛りがあります。アニメミライの1作品当たりの想定枚数1万枚×4作品をほぼ同じ時季に日本国内で動画と仕上げを行うのは非常に困難です。リテイク等含めた動画マンへの指導にかける時間が取れなくなってくることが多いです。

日本国内の動画キャパシティはアニメミライだけに割いたとしても、ギリギリか恐らくキャパを超えてるのですが、そこに通常のテレビシリーズや劇場やOVA作品が加わると完全にキャパシティオーバーです。

現実問題として国内だけだと間に合わないということで海外への発注ということも発生しています。

 

スタジオの場所

 

制作各社はアニメミライ用作品の為に、独立したスタジオを用意する必要があります。

アニメミライ作品の制作が完了したらすぐに引き払わなければなりません。その為に制作費を使用するというのは無駄なコストではないでしょうか。場所を探して敷金等の頭金を払い、毎月の家賃も発生します。

  

■上記2点を踏まえた改善案

 

制作時期をずらしましょう。

現状の4社一斉に制作ではなく3ヶ月ずつずらして制作。

そうすることで動画以降のセクションのキャパシティをアニメミライに集中して割くことができるようになります。

 

スタジオの場所はアニメミライの方で借りた場所で。2スタジオ分が入れるスタジオにして(中は部屋やパーテーションで区切って)1社当たり6ヶ月の制作期間を充てると、現状の年間4作品は十分に制作可能です。

実はアニメミライプロジェクトはJAniCAのスタッフが不定期で各スタジオに監査に訪れています。スタジオを一箇所にすることでJAniCAスタッフの移動等の手間を省くことができます。

もちろん制作各社が負担していた不要な事務所費用も省くことができます。その分適正な金額を制作費から引けばいいです。

年間通してプロジェクトが動くことになるので、JAniCAの方も現状のギリギリのスタッフから人数を増やすことができます。そうすることでよりアニメミライプロジェクトを充実させる為の動きも取りやすくなるかと思います。

 

事務所に専任の指導者を配置・育成プランを共有

 

スタジオを固定にすることで、各制作会社付きでは無く、ジャニカ付きの育成専属スタッフを置くことも可能になります。

新人育成の為の体系的な教育プラン作成や、その効果を測定する為のスタッフです。これにより育成プランにおいてもPDCAサイクルを回し、より効果的な新人育成を行えるようになるかと思います。

 

 実際に制作時期をずらすことはプロモーション上、問題があるのかも知れませんが、育成という点から考えるとメリットの方が大きいんじゃないかな。

何にせよアニメミライのプロジェクト自体は良いものだと思うので、今後も続いていって欲しいですね。

 

 

アニメミライ2014  映画パンフレット