ここがヘンだよ日本のアニメ業界

アニメ会社で働きながら考えたことを書いていきます

実はアニメ業界に入るのなんて簡単だよという話

周りで話を聞くと、アニメ業界に入るのって難しいと思われてるみたいですね。
確かに絵が描けないといけないとかの技術が必要と思われていて敷居が高いのかもしれません。
 
でも実際は一切敷居なんか高くないです。
 
今回はどうすればアニメ業界に入れるのかを書いてみようかと思います。
 
求人に応募して下さい。
 
以上です。
 
これだけだとさすがに身も蓋も無さ過ぎるので、もう少し説明します。
 
とりあえず今回はアニメ系の専門学校や美大、芸大を出ていない人を想定します。
絵が描けなかったり、アニメーションについて特別な知識がない人ですね。
そのような人が、技術を持った専門職の集まりであるアニメ業界に入れるかというと実は簡単に入れます。
 
大体どこの会社も常に人手不足です。
よって、求人サイトでキーワードを「アニメ」で検索したら絶対にどこかしらの会社は募集しています。
特に制作進行の募集が多いですね。
技術が無くてもできる職種が制作進行だからということと、制作は特に辞める人が多いからという理由からですが。
制作進行の仕事の説明は下のページが詳しく説明してくれています。
 
 
要はスケジュールとスタッフの管理です。
あとはカット袋の管理と移動ですね。
あ、車の免許は必要です。
 
大手の会社は求人サイトには載せずに、自社のHPで募集することも多いですね。
ただ大手はやはり人気があるので競争率も高くなってしまいます。
そこで狙い目は、名前を聞いたことが無いような中小の会社です。
名前を知らない会社でも片っ端から応募してみましょう。
その際に大事なことは、履歴書をしっかりと書くことです。
 
ポイントは
・PCで作成
 基本的なPC操作ができるという証になります。
・職を転々としていないように見せかける
 すぐに辞めると思われると採用が遠ざかります。
・生真面目さをアピールしない
 不条理なことばかりなので、根が真面目だと精神的に折れてしまうと思われます。
 真面目に仕事はするけれど、楽観的な性格だとアピールしましょう。
・社交性があって、空気も読むことができるということをアピールする
 いろんな人と接する仕事です。空気が読めなかったり話し辛い人はNGです。
・特にオタクアピールをする必要はない
 相手は全員プロです。生半可なオタクアピールは逆効果ですので、やめておいた方が無難です。
 もちろん好きな作品について語るのはOKです。
 要はオタクが必要なのではなく、仕事のやる意思のある社会人が欲しいということを理解しておきましょうということです。
 
運良く面接に進むことができれば、笑顔で雑談でもするような気持ちでリラックスして何故業界に入りたいのかの自己アピールができれば大丈夫です。
宮﨑駿を越える作品が作りたいとか大層な目標とか無くても構いません。
好きな作品があって、それがどのように作られているのか興味があったぐらいで問題ありません。
むしろそれぐらいの方が好感度は高いです。
 
これらのポイントに気を付ければ、制作進行としてアニメ業界に入るのなんて楽勝です。
 
制作進行は唯一、アニメーション制作の全セクションに関わる仕事です。
ここで各セクションの仕事を学び、興味を持った職種に移るということも可能です。
例えば撮影(コンポジット)の仕事に興味を持てば、熱意を示して筋を通せば撮影職になることもできます。
 
という訳でアニメ業界に興味がある人は今からでも遅くありません。
是非求人サイトを見て応募してみて下さい。
 
ちなみに僕は一切オススメしませんwww
 
アニメーションの基礎知識大百科

アニメーションの基礎知識大百科

 

 

 

学校の先生とアニメ業界ってよく似てる

最近学校の先生が大変だというエントリが話題になっていましたね。

 とある、真剣に働いていた高校教師の実態

 
これらを読んで思ったことが、アニメ業界と学校の先生ってよく似てるなということでした。
 
■学校の先生とアニメ業界の似てるポイント
 
アニメみたいな好きなことをしてお金がもらえるんだから、大変なのは当たり前だろうという意識が、働いている本人もだし、ある種周囲からもあるということですね
学校の先生も生徒を立派に教育するという崇高な仕事なので、教師が身を粉にして働くのは当たり前だろうという意識がありそうな印象。
 
ギリギリの人数で業務を行っているのに関わらず、時間外・残業当たり前で仕事を割り振られること。
 
本来の業務ではない雑用が非常に多く、そちらにも時間を取られること。
 
人と接することも業務に入っているので、相手の時間にも合わせなければならないということ。
 
■どうしてそうなってしまうのか?
 
会社の人数自体が常にギリギリなので、突発的な仕事が入ると残業してでもやらなければいけないという風潮がある。
自社での作業したもののリテイクであれば、もちろん対応しなければならない。
そのリテイク対応は先方の言う時間に従わなければならない。
納品2日後にリテイクの連絡をしてきて、数時間で直して下さいということもザラ。
 
新規仕事であれば断るという選択肢もあるけれど、融通の利かない会社だと思われたら次からの発注に響くので無理したら作業可能であれば受けざるを得ない。
ここでの無理はもちろん時間外業務という意味です。
任意の残業だからといって帰ろうとしても、若手だったり予定の有無を聞かれて予定が無ければ即残業コースです。
予定があっても仕事だからとキャンセルさせられることも当たり前にあります。
 
普通の会社であればあるであろう総務的な部署がないので、いる人員でそういう業務も担当します。
当然ながらその業務の工数は考えられていない。
 
また通常の業務の中で、打ち合わせが占める割合が非常に大きいです。
シナリオ、コンテ、演出、作画、色彩、色指定、背景、撮影等様々な打ち合わせがあります。
一人でこの全部の打ち合わせに出る必要はありませんが(作品の全体管理をしているデスクや設定制作は出るかも)それでも数多くの打ち合わせがあります。
その打ち合わせの時間は、参加者の誰かが、その時間しか出れないとなれば深夜や早朝になることもあります。
9時~17時というような一般社会での定時という概念は無く、個人の生活時間も考慮されることなく、全員が他の打ち合わせと被ってない時間のみで決定されます。
自然と生活リズムというものが無くなってしまいます。
打ち合わせがない時間に個人が持ってる業務を行います。
 
大前提として作品の制作スケジュールが最優先になってしまっているので、そのスケジュールに作品に携わる全員が合わせなければならないという雰囲気です。
 
学校の先生の生徒の為という前提というかお題目の前に、個人の事情が鑑みられないようになってしまっているということが、アニメの状況とよく似ていますねwww
 
■どうすれば解決できるのか?
 
全体での予算を増やすことができないのであれば、業務を細分化して、ワークシェアリングをするしか現場の状況を改善する方法はないでしょうね。
アニメ業界も業務細分化して、給料が減ってでも、外注等に委託できる分は委託したいと思っているスタッフはたくさんいると思うのですが、どうなんでしょうね?

業界の中の人から見てもアニメミライはなかなか良いプロジェクトだなぁと思う話

アニメミライってあるじゃないですか。若手アニメーター育成プロジェクトの。

若手アニメーター育成プロジェクト - Wikipedia

 簡単に言うと、育成方針とそのルールに従えば、国がお金出してくれて制作会社が作品が作れるというプロジェクトです。

 

これってなかなか良いプロジェクトだと思う訳です。

 

このプロジェクトで作品を制作する各社は、売上とか気にせずに「練習」として作品作りができる訳です。

なかなかそんな機会はないですよ。

 

今回はいかにアニメミライが良いプロジェクトかということと、僕が考える改善点を書いていこうと思います。

 

■アニメミライの良い点

 

一応若手アニメーター育成プロジェクトと銘打ってはいますが、ここで育成されるのは実は若手アニメーターだけではないです。

 

まずプロデューサー。

結構どこの会社も新人プロデューサーを起用しています。メインのプロデューサーは自分の担当作品で忙しいという事情があるのでしょうが。

ほとんど表には出ませんが、プロデューサーがその作品作りにおいて一番重要なポジションを担っています。監督のオリジナルの企画というのもありますが、そうではない場合、監督も含めスタッフを采配する権限を持ってるのはプロデューサーです。

どんなに大手の会社でもプロデューサーがしっかりしていないと良い作品は作れません。

スタジオぴえろの布川さんもプロデューサーの重要性を語っていますね。

 

アニメ業界は将来を見据えて作品作りと人材育成を進めなければならない、動画協会の布川理事長が語る - GIGAZINE

 

そのプロデューサー業務をアニメミライプロジェクトを通して経験できるのは、実はアニメーター育成よりも非常に価値のあることではないかと思います。

いっそのこと、アニメミライはプロデューサーも新人しか担当してはいけないという縛りをつければいいんじゃないでしょうか?

 

つぎに監督。

アニメミライでは一線級の監督ということになっていますが、そういった監督であっても売上、売れ筋に関係なく作品を作ることができるというのは、得難い経験でしょう。

 

あとはもちろんアニメーター。

ここで言うアニメーターは新人ではなく、監督・作画監督も含めたベテラン側のアニメーターです。

アニメーターというのはフリーだったり職人気質の人が多く、人に教えるという経験がある人は少ないです。

もちろん現場で質問されたことに対して答えるということはありますが、作品を通して体系的に指導するという経験を持っている人はあまりいないです。

それを一線級の監督やアニメーターに経験してもらうというのは、アニメミライ以降での作品作りにおいて活きてくるのではないかと思います。

 

■アニメミライの改善した方がいいと思う点

 

ここまではアニメミライのメリットを書いてきましたが、プロジェクトを見ていて改善した方がいいんじゃないかという点もいくつかあります。

  

作品制作時期

 

同時に選抜された4社が制作にあたるのですが、同時にする必要があるのかということですね。

原画までは完全に固定スタッフですが、後半のスケジュールが逼迫してきたタイミングで動画・仕上げという行程があります。

アニメミライには国内の動画マンという縛りがあります。アニメミライの1作品当たりの想定枚数1万枚×4作品をほぼ同じ時季に日本国内で動画と仕上げを行うのは非常に困難です。リテイク等含めた動画マンへの指導にかける時間が取れなくなってくることが多いです。

日本国内の動画キャパシティはアニメミライだけに割いたとしても、ギリギリか恐らくキャパを超えてるのですが、そこに通常のテレビシリーズや劇場やOVA作品が加わると完全にキャパシティオーバーです。

現実問題として国内だけだと間に合わないということで海外への発注ということも発生しています。

 

スタジオの場所

 

制作各社はアニメミライ用作品の為に、独立したスタジオを用意する必要があります。

アニメミライ作品の制作が完了したらすぐに引き払わなければなりません。その為に制作費を使用するというのは無駄なコストではないでしょうか。場所を探して敷金等の頭金を払い、毎月の家賃も発生します。

  

■上記2点を踏まえた改善案

 

制作時期をずらしましょう。

現状の4社一斉に制作ではなく3ヶ月ずつずらして制作。

そうすることで動画以降のセクションのキャパシティをアニメミライに集中して割くことができるようになります。

 

スタジオの場所はアニメミライの方で借りた場所で。2スタジオ分が入れるスタジオにして(中は部屋やパーテーションで区切って)1社当たり6ヶ月の制作期間を充てると、現状の年間4作品は十分に制作可能です。

実はアニメミライプロジェクトはJAniCAのスタッフが不定期で各スタジオに監査に訪れています。スタジオを一箇所にすることでJAniCAスタッフの移動等の手間を省くことができます。

もちろん制作各社が負担していた不要な事務所費用も省くことができます。その分適正な金額を制作費から引けばいいです。

年間通してプロジェクトが動くことになるので、JAniCAの方も現状のギリギリのスタッフから人数を増やすことができます。そうすることでよりアニメミライプロジェクトを充実させる為の動きも取りやすくなるかと思います。

 

事務所に専任の指導者を配置・育成プランを共有

 

スタジオを固定にすることで、各制作会社付きでは無く、ジャニカ付きの育成専属スタッフを置くことも可能になります。

新人育成の為の体系的な教育プラン作成や、その効果を測定する為のスタッフです。これにより育成プランにおいてもPDCAサイクルを回し、より効果的な新人育成を行えるようになるかと思います。

 

 実際に制作時期をずらすことはプロモーション上、問題があるのかも知れませんが、育成という点から考えるとメリットの方が大きいんじゃないかな。

何にせよアニメミライのプロジェクト自体は良いものだと思うので、今後も続いていって欲しいですね。

 

 

アニメミライ2014  映画パンフレット